トルクと軸力を表す方法に「締め付けトルク=トルク係数×ボルト径×軸力」という式がある。
トルク係数は一般的に0.1〜0.3くらいなので、たとば0.01mのネジを20Nmのトルクで締め付ければ20÷0.2×0.01=10000Nm(1t)の軸力がかかっているということになる。
トルクの単位 |
トルク=力(N,kgf など)×長さ(N,cm など) |
1N・m=0.101972kgf・m |
1N・m=10.1972kgf・cm |
1kgf・m=9.80665N・m |
話は戻って摩擦のこと、座面やネジ部が油切れしていたり、汚れていたりすれば、摩擦は大きくなる。同じトルクで締めても、摩擦が大きければ軸力は小さい。
たとえばステンレスのネジなどに多いが、いくら締めても締まり切らないので、無理して回していると頭がぽろっと折れるようなケース。マフラーのネジなどもそうなる傾向がある。締め付けトルクは規定まで上がっているのに軸力が働かず、そまま締めこむから、ネジが絞まり切ってないのでボルトが折れる。また、インパクトレンチを使用した締め付けでは、締めている途中でネジか焼き付いて折れてしまうなことも起こる。これもやはり、きちんとオイルを塗っていなかったことが原因だ。
ネジを締めるとき、手ごたえがある場合や、外したネジの座面がざらざらになっているようなものも、焼き付いたりかじっている証拠だ。サービスマニュアルなどでオイル塗布が指示されているところはもちろんだが、それ以外のところでも、オイルを塗ってはいけない理由のある特定のところを除いてすべてに、オイルを塗ってからネジを締めるのが基本なのである。
ただし、ネジに塗るオイルの種類も考えておかなければならない。あまりにさらさらでは、大きなトルクをかけたときにオイル切れが起こり、ネジが焼き付いてしまうこともある。では、すごく潤滑性の良いオイルを塗っていればいいのかといえば、そうともいえない。今度は軸力が大きくなりすぎる可能性も出てしまう。たとえば二酸化モリブデン系は、軸力は大きくなるが、あまり安定しない傾向もある。ともあれ、重要なのは本来必要とされる軸力を安定して得ることなのである。
適度とされる軸力を安定して得るには、専用品として売られる軸力安定化剤を使うといい。手頃なもので代用する場合は、エンジンオイルなどであれば問題はないだろう。 なお、ネジロック剤を使用するところでは油を差せないものだが、ロック剤自体が潤滑する作用を持ち、しかもトルクに対する軸力の安全度も高いという。 ちなみに、ネジを締めたときにどこに力がかかっているかというと、かみ合い始めの3山くらい。ここで力のほとんどを負担している。だからオイルはそのへんに普通に塗っておけばいいわけだ。
余談だが、ネジの径が先端に行くほど太くなっているようなボルトがある。これはネジのかみ合い始め部分ばかりでなく、かみ合っている領域全体で力を受けようという考えのものだ。クルマ関係でも、ディーゼルエンジンやモーターサイクルなどで、シリンダーのスタッドボルトなどに使われている。
ネジ締めの管理方法には、ここまで説明してきた「締め付けトルク」によるものとは別に「ネジの伸び」で管理する方法もある。ネジを締めていくと、ネジ自体が引っ張られて伸びていくものだが、その伸び量を測っていけば、軸力を推測することができる。 たとえばコンロッドボルトのようにネジの上下が露出しているところであれば、マイクロゲージやダイヤルゲージなどで伸びを測れる。軸力の具体的な数値は、ネジの材質や締め付け部材の強度などにもよるが、とにかく伸び率がわかれば軸力を計算で出すこともできる。
たとえば規定トルクで締め付けたときに、本当に最適な軸力がかかっているかどうかを確認するために、この伸び率のほうも測ってみるというようなことができるのである。
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